· 

【エジプト実務】エジプトの労働法(2026年更新)

ピラミッドとスフィンクス

 

エジプトの労務法制の中で、最も重要な法律である労働法 Labour Law、実は2025年9月と、ごく最近改正されています。

 

従業員の保護にさらに一歩進歩した労働法は、会社にとっては厳しい規則が多くあり、注意が必要です。

 

今回は、エジプトの最新労務法制について、注意すべき点に焦点を絞ってお伝えします。

 

 

■就業時間(第117条~第119条)

 

17歳以下:一日実働6時間、週36時間まで

18歳以上:一日実働8時間、週48時間まで

※激しい肉体労働を伴う場合はさらに上限が下がる

 

休憩時間:一日60分以上(連続でも分断されても可)

※連続して5時間働いたら必ず休憩時間が差し込まれなければならない

 

拘束時間:一日10時間まで

※一定の職種については、断続的な働き方になることを踏まえ、一日12時間まで

 

■給与の数え方及び週休(第110条)

 

週休:最低1日

※24時間以上働いていない時間が継続すること

 

エジプトの給与は、フルタイムの場合、休日も含めたカレンダーの日数を給与の対象としており、週休についても有給の扱いとなります。

 

例えば、4月は合計で30日ありますが、従業員が欠勤ないし無給休暇を一日取得したとすると、給与は「基本給×(29日÷30日)」と計算されます。

 

■残業および休日出勤(第121条)

 

残業とは就業時間を超えた勤務を指し、休日出勤とは個々に定められた休日に勤務 することを指します。

 

残業代(一般):135%

残業代(夜間):170%

休日出勤:100%+翌週に代休付与

※ここで、「100%」とは、本来休日が有給であるところ、元々1日分の給与が支給されるのに加えて、休日出勤した時間数分、残業代が支給されるという意味

 

なお、残業代を支給されて残業する場合であっても、最大で12時間までしか拘束されてはならないとされており、一日あたり2時間までしか残業できないという理解が通念となっています。

 

 

■昇給(第102条)

 

勤続1年ごとに、従業員の給与は最低3%上昇しなければならず、経済的な事情のためにそれができない場合、会社は労働裁判所 Labour Court に申請する必要があるとされています。

 

なお、最低賃金は年々上昇していますが、2025年3月以降 EGP7,000/月となっており、2026年7月以降はEGP8,000/月に引き上げられることが決まっています。

 

■訓練および機能回復基金への献金(第20条~第21条)

 

従業員が30人以上となる企業は年に一度、訓練および機能回復基金 The Training and Rehabilitation Financing Fund という公的基金への献金が求められます。

 

献金金額:個々の従業員の給与の 0.25%

最低金額:EGP10/月(=EGP4,000/月以下は一律 EGP10/月)

最高金額:EGP30/月(=EGP12,000/月以上は一律 EGP30/月)

 

 

■年次休暇(第124条~第128条)

 

初年度:15日/年

次年度以降10年目まで:21日/年

10年目以降または50歳以上の場合:30日/年

障害者の場合:45日/年

※危険地帯、遠隔地などでの勤務となる場合、7日/年が追加される

 

年次休暇の注意点として、会社は従業員にいつ休暇を取るべきか指定することができ、最低6日連続で、年間最低15日は取得させなければならないという規則があります。

 

従業員側が指定された休暇を取得したくない場合、書面で通知することで 権利消滅となります。

 

ただし、緊急の場合、従業員は連続2日、年間7日まで、年次休暇を取得することができるとされています。

 

また、取得日数が年度ごとの付与日数に達しなかった場合、残数は自動的に繰り越されますが、最低でも3年に一度、会社側が未消化分の買い取りを行う必要があるともされています。

 

雇用関係が終了した場合にも、未消化分をすべて買い取って支給する必要がある点、注意が必要です。

 

■試験休暇(第126条)

 

10日以上前に通知すること、および実際に受験した証明を提出することを条件に、従業員は資格取得などの試験日に有給を取得することができます。

 

■病気休暇(第131条)

 

従業員は、病気または怪我により勤務不能であることを医師が証明した場合、3年ごとに、以下の期間、以下の給与を受け取りながら有給休暇を取得することができるとされています。

 

最初の3か月:月額給与額の 100%の有給

次の 3 か月:月額給与額の 85%の有給

次の 3 か月:月額給与額の 75%の有給

 

■出産休暇(第54条)

 

合計期間:4か月

出産後期間:45日以上

適用人数:3人目の出産まで

 

また、妊娠6か月目に入った従業員は、最低1時間以上勤務時間が短縮されなければならないという規則も設けられています。

 

■巡礼休暇(第130条)

 

勤続5年を満了した従業員に対しては、会社は一度だけ、宗教的巡礼のための有給休暇を1か月付与しなければならないとされています。

 

■契約書の作成(第89条)

 

雇用契約書は、アラビア語で4部作成することが義務付けられています。

 

1部は会社保管用

1部は従業員保管用

1部は社会保険庁提出用

1部は関連省庁提出用

(※最後の「関連省庁」がどの政府機関を指すかは言及されていません)

 

■解約条件(第154条~第165条)

 

無期限雇用の場合、従業員または会社のいずれかの側が、3か月の通知期間を置いて雇用契約を解約できるとされています(合意により延長は可能)。

 

しかし、会社の側が雇用契約を解約する場合には、正当な理由がなければならないとされており、それがない場合には勤続年数×2か月分の補償金を支払う必要があります。

 

また、会社の側が解約を通知する場合には、通知期間中、従業員が次の仕事を探すために週に1日有給休暇を取得させなければならなくなります。

 

会社側が通知期間分の給与を一括で払えば、通知期間を短縮することもできます。

 

反対に、従業員が解約を通知する場合には、給与を受け取らないことにすれば、通知期間を短縮することもできてしまうため、実際には3か月の通知期間が順守される可能性は低いといえます。

 

■定年退職(第171条~第172条)

 

定年退職年齢:60歳

退職金:最初の5年分×半月分の給与+6年目以降の勤続年数×1か月分の給与

(※給与額は直近の月給を参照するとされています。)

 

以上、エジプトの労務法制についてお伝えしました。

 

正直、従業員に甘すぎじゃないか??と思う規則もありますが、法令を平気で無視する企業も多い中、低賃金で働かされることの多い国民の生活を安定させるために、できる限りの手を尽くして立案された労務法制でもあり、外資企業としては、規則の一つ一つに気を付けて、コンプライアンスを確保していくことが求められるでしょう。

 

労務関係のご相談も、受け付けております。

 

お気軽にお声掛けください。

 

記事:近藤 貴政

 

参照:

https://eg.andersen.com/wp-content/uploads/2025/05/Translation-of-Labor-law- No.-14-of-2025.pdf

https://habibalmulla.com/articles/a-landmark-reform-for-egypts-workforce/

https://english.ahram.org.eg/NewsContentP/3/565125/Business/Egypt-to-raise- minimum-wage-to-,-pounds-from-July-.aspx

 

 

関連記事