ピラミッドとスフィンクス
今回は、IMFによるMENAエリアの最新経済状況についてです。
IMFは、5月1日に発表した『Regional Economic Outlook』で、2025年のMENA(中東・北アフリカ)地域の実質GDP成長率の予測を2.6%とし、2024年10月の予測4.0%から下方修正しました。
これは、2025年の世界の経済成長率見通しの2.8%を下回っています。
画像:IMF 報告書『Regional Economic Outlook』より
また、MENAエリアの2026年の予測は3.4%となっています。
2025年4月の米国の関税措置の影響については、MENAエリア諸国は米国との取引リスクが少なく、エネルギー製品への関税が免除されていることから、直接的な影響は軽微であるものの、間接的な影響は今後顕著になると予測。
IMFは、原油生産の回復、紛争の影響の安定化、構造改革の進展を前提に、2025年と2026年のMENAエリアは緩やかな成長を予測する一方、下方修正の理由に、世界経済の成長鈍化や原油価格の下落、長引く紛争などを挙げています。
画像:IMF 報告書『Regional Economic Outlook』より
MENAエリアの今後の見通しについては、大きな不確実性が存在するとし、以下の4つのリスクを挙げています。
① 貿易摩擦 (緊張の高まりで石油生産の遅れなどが発生)
② 紛争(紛争の悪化が、貿易・観光・サプライチェーンの混乱を招く)
③ 気候変動によるショック(MENAエリアは、干ばつや洪水などの極端な気象現象に対して依然として脆弱)
④ ODA(政府開発援助)の減少(低所得国や紛争の影響下にある国などに深刻な経済的・人道的影響をおよぼす可能性あり)
IMFは、上記のような不確実性に対し、MENA地域諸国は新たな環境への適応と経済の変革が必要であると指摘しています。
国・地域によっても経済状況の予測は異なり、GCC(湾岸協力会議)諸国は、非石油分野の拡大と石油生産の段階的な再開で成長が加速すると予測。
一方、GCC以外の国では、制裁や原油価格の下落、生産能力の制約、財政縮小により、成長率が低下すると予測しています。
紛争の影響を受けていたエジプトやヨルダンも紛争長期化の影響は残るものの、2025年は緩やかな回復を予測しています。
なお、世界銀行も2025年4月にMENAエリアの経済予測を報告し、IMFと同様に緩やかな成長を予測しています。
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